コペンハーゲン(デンマーク)における環境への大いなる取組みと日本農業
アクションコーポレーション
科学顧問 宇城正和(農学博士)
この度、日本芝草学会からの派遣で、北欧のコペンハーゲン(以下、CPHと略)で開催された第14回世界芝草研究会議に参加しました。筆者は、以前の北京、ニュージャージー大会にも参加しましたが、今回のCPH大会がもっとも印象深かったのでレポートいたします。CPHは幸福度世界一の都市であり、環境への保全、もっと今流にいうとサステナビリティ(持続可能性)への取組みが世界一進んでいます。CPHはカーボンニュートラルの達成目標を2025年に設定していて、全市をあげてそれに向かって進んでいるのが感じられました。農業も環境への取組みと深く関わっているはずです。まずは、CPHの水事情とエネルギー問題から。
CPHの環境対策:
他の多くのヨーロッパの都市水道が飲料に適さないのと違って、CPHで宿泊したホテルでは、水道蛇口横に「水道水は飲めます」とのラベルが貼ってありました。ただし、シャワー室のソープはボディと頭髪兼用のもので、最初は違和感がありました。また、7月に訪れたホテルのすぐ近くの運河では水泳が可能で、実際、人々が水着姿で水泳や日光浴をしていました(CPHが公認)。
図1.運河に設置されたデッキ(1枚目)と遊泳者(2枚目)。
下水処理浄化水が運河に放流される(3枚目)。
通常、大都市の運河、河川は下水処理水や工場排水が流れ込み、環境安全規制はあるものの、水泳できない状態です。しかし、CPHでは下水処理水がさらに浄化されて、運河に流されていました。また、エネルギーに関しては、CPHの水道、下水処理、発電所等の巨大な総合会社HOFORの発電所を訪問する機会がありました。その発電所は、現在は木材チップ(あるいはペレット)のみを燃料として火力発電を行っており、電力以外に発生する熱で温水をつくり、それを市内の暖房等に使用して、エネルギー効率を高めています。木材を材料とする火力発電では、世界最大規模のもので、筆者はたまたま発電所が稼動していない時期(1年のうちのメインテナンス時期6週間)に訪れたため、通常、見学できない炉の内部やさまざまな施設を見ることができました。木材を燃焼させた場合も二酸化炭素CO2が排出されますが、化石燃料(石油、石炭)とは違って、現在(近過去)のCO2を大気から吸収してくれた植物(木材)をまた、燃やしてCO2ガスを発生させても、それはニュートラル(プラス/マイナス0)と判断されます。
CPHのカーボンニュートラルへ向けての取組には並々ならぬものがあります。世界に先駆けて2025年にはカーボンニュートラルを達成しようとしており、特にHOFORの発電所を案内してくれたジョセフ氏からは自信の程と誇りがうかがえました。
CPHの農作物:
農作物(加工製品)についても、BIO、ØKO(あるいは単にØ)の表示の他に、草色と星印による葉形のヨーロッパ有機認証のマーク等が表示されていました。環境意識に対する高さだけではなく、人間の健康へも配慮した農作物と加工品がスーパーにも並んでいます。たとえば、パンのコーナーでは、雑穀やクルミ等のナッツ類の入ったパンや全粒粉を用いた色の濃いパンが主流で、日本で良く見かける白い食パンはほとんど見かけませんでした。
図2.スーパーマーケットでの農作物。左からイチゴ、ラズベリー(木苺)、ブルーベリー。ØKOの意味はエコのことで、エコロジー、すなわち環境に配慮した持続可能性を達成する有機農作物であることを示す。草色の表示はヨーロッパ有機(オーガニック)認証を示す。
図3.スーパーで買った有機認証のないデンマーク産リンゴ。糖度、うま味ともに低く、日本産リンゴに比べて劣る。
日本農業の今後の課題:
有機認証のないデンマーク産のリンゴを買って食べましたが、味は日本のリンゴに比べて劣りました。今後、日本の農作物も有機栽培あるいは減農薬栽培等の表示をしたものがふえてくるでしょうが、味へのこだわりは日本が世界トップレベルにあるといえますし、今後もより品質の高いものへの追求がなされていくことでしょう。日本で栽培された高品質の作物が、輸出品目としてこれからさらに増えていくことが期待されます。
農業就労時間を減らし、作物の出荷量・品質を高めていくには、ドローンの活用やスマート農業等によるイノベーションとともに、土づくりを重視した栽培が必須となります(土壌の健全度の向上)。自然界に存在している生命エネルギーの高い土壌の微生物の力を活用することが得策となります。日本人には古来より菌食文化があり、微生物による発酵技術がお家芸なわけですから、土壌の微生物活用にもっと目を向けたいところです。
一方、今後の農作物の付加価値を高めていくには、栄養成分を表示することが効果的ではないかと考えています。たとえば、ジャガイモであれば、100 g当たりカリウム410 mg、ビタミンC35 mg(バナナでは、カリウム360 mg、ビタミンC16 mg)が食品成分表(2012年)の標準値で、これよりも含有量が多いと、栄養価値がより高いわけです。最近では、高機能性物質のリコピンやGABAの含有量がトマトで表示されているのが目に付くようになってきました(リコピンは抗酸化物質で、カロテンの一種。GABA(ギャバ)はガンマーアミノ酪酸の略で、血圧を下げる、睡眠の質向上、精神ストレス・疲労感の緩和等の働きがあるといわれている)。
今後の問題点として、有機栽培作物が化学肥料作物に比べて、うま味も栄養価もあまり変わらないという事例があるので、収量、品質(うま味)、栄養価という三本柱、さらに、環境に優しい(持続可能性)という要素も加えて四本柱の強化が重要になってくると思います。これらを支える内容に見合った価格設定をどうするか、農家の収益をどのように確保し守っていくか、政府の迅速で適切な対応が喫緊の課題です。北欧やオランダ等のヨーロッパでの取組みが非常に参考になりそうに思います。日本の農家、研究者の工夫・努力も一体となって、日本国家の基盤である農業を魅力ある、活力ある産業に変えていかねばなりません。
弊社アクションの資材について(参考):
最先端の米国リドックス社製品を初め、弊社が取り扱っている資材は、ほぼバイオスティミュラント(生命活性化物質、Biostimulant)です。バイオスティミュラントとは、少量で植物の成長を促進する物質のことです。環境からのストレスに負けない強い植物体を作る、土壌栄養素の吸収効率を高める、作物の品質を高めるなどの目的で植物に適用される物質、または微生物をさします。
たとえば、リドックスCaSi(カルシウム10%、二酸化ケイ素22%含有)はマイクロカプセル化により、他に類を見ない、非常に高い吸収効率で植物の細胞壁を強固にします。病害耐性、酸化ストレス耐性を高め、また、光合成能をも高めるので、品質、収量もアップすることが確かめられています。また、リドックスの資材は土壌に施肥した場合、土壌での不都合な結合を防ぐしくみがあり、同じ施肥量でも植物体に吸収される栄養素量ははるかに多くなります。たとえば、一般のリン酸肥料では、陰イオンであるリン酸と土壌の陽イオンであるカルシウム、鉄、アルミニウム等が結合して、根から吸収できない状態になります。リドックスの資材はそのようなことが起きないようフミン酸、フルボ酸、アミノ酸等でキレーション、コンプレクシングがなされています。
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